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【第3回 豚病症例検討会レポート】
 
 
泣Tミットベテリナリーサービス 石関 紗代子
 
 

◇テーマ◇
PCVADその後 ―
養豚生産現場で問題となっている各種疾病の実態とその背景を臨床病理的視点から探る


◇症例発表者◇

1.石川 弘道 先生離乳子豚におけるPRRS症例
2.久保 正法 先生PRRSによる流産症例の紹介
3.杉山 正徳 先生肥育豚におけるPRDC
4.奥村 華子 先生B群ロタウイルスが疑われた哺乳子豚の下痢
5.小池 郁子 先生一貫経営農場における浮腫病と連鎖球菌の発生
6.古市 朋大 先生肥育豚におけるローソニアの症例
7.志賀   明 先生劣悪な飼育環境下で発生したオガコ豚舎での肉豚死亡例
8.大井 宗孝 先生哺乳豚の封入体鼻炎(サイトメガロウイルス)
9.西山 祥子さん(麻布大学病理学教室 学生):PCV2関連疾患における消化器病変の病理学的検索

◇診断◇
 代田 欣二 先生、須永 藤子 先生(麻布大学)

◇コメンテーター◇ 久保 正法 先生(動物衛生研究所)
※注釈の無い病理組織写真は代田欣二先生のご提供。
  <掲載画像の無断転載・複製を一切禁じます>



1.石川 弘道 先生 : 離乳子豚におけるPRRS症例

 A農場において、PRRSと診断された離乳子豚の症例。肺のPCRでPRRS陽性、肺の菌分離でHps陽性が確認された。
 また、近隣の農場から検出されたPRRSVとのORF5シークエンスの相同性を比較した。

  AとBの相同性は95.0%、AとCの相同性は94.4%、BとCの相同性は95.7%であった。

【病理組織所見】
 気管支内に壊死細胞が見られることから、間質性気管支肺炎と診断した。免疫染色でPRRSが陽性となった。
  
  肺胞腔内に壊死細胞が見られ、一般的なPRRSの病変とは異なった病変であるとのコメントがあった。


2.久保 正法 先生 : PRRSによる流産症例の紹介

 PRRSの病理診断について、PRRSの流産胎子には特徴的な病変が見られないため、流産胎子から病理学的にPRRSによる流産を診断することは難しい。
 下写真は胎齢97日齢の流産胎子。母豚にPRRSウイルス血症が見られたため、PRRSによる流産と考えられるが、流産胎子の肺にはうっ血が見られるのみで、特徴的な肺病変は見られない。


肺 (組織写真:久保正法先生)
  一方、PRRSによる異常産で、11頭中6頭が死産だった腹の生き残り子豚(4日齢)の肺には特徴病変である肺胞中隔の肥厚が見られた。同時に、脳に強い非化膿性髄膜炎が見られた。PRRS感染により、このような強い非化膿性髄膜炎が見られることは珍しい。胎子期の感染が疑われた。
  
左 : 肺 (組織写真:久保正法先生)   右 : 脳 (組織写真:久保正法先生)


3.杉山 正徳 先生 : 肥育豚におけるPRDC

 PCV2ワクチン接種開始し(BI社のものを子豚および母豚(分娩1〜2週後)で接種)、肥育舎事故率が6-7%から1.5-3%に低減。しかし110〜130日令で呼吸器症状が散発したため検査を依頼した。細菌検査、PCR検査ではApp2型、M.hyo、PRRS(ワクチン株)、PCV2が検出されたが、病理学的検査ではPRRS、PCV2を疑う病変はみられず、最終的な死因はApp2型による肺炎(一部では、M.hyoの重複感染)と判断した。今後の対応は、飼育環境の改善と、App2型、M.hyo対策の改善。
 今回の症例では、同一検体であっても検査機関によりPCR検査結果(PRRS、PCV2、マイコ)が異なっていた。また、App2型の薬剤感受性が個体によって異なっていた。(個体によってアンピシリンとST合剤に対して、感受性と耐性の菌が分離された)

【病理組織所見】
 肺には好中球を伴うモザイク状の壊死層が見られた。

 Appは免疫染色で型まで判別可能なので免疫染色を実施するとよいとのコメントがあった。
 また、マイコのPCRは特に採材部位により結果がバラつく傾向がある。プライマー設定も重要との意見も出された。


4.奥村 華子 先生 : B群ロタウイルスが疑われた哺乳子豚の下痢

 2日齢で水様下痢便をしていた哺乳子豚の症例。
 生後2〜5日の哺乳子豚の下痢が多発。下痢便は白〜黄白色水溶性で嘔吐あり。産歴・豚舎に関係なく多くの腹で発生6〜7日で下痢は治まるが、下痢発生時離乳体重4.8kg(平常時5.3kg)(注:16日離乳)、下痢発生時死亡淘汰0.56頭/腹(平常時 0.4頭/腹)。
 豚群の下痢便の検査結果より、ロタウイルスB群が疑われた。(ロタウイルス検査では、PCRよりもRNA-PAGEで感度が高かった。)ただし今回病理検査のために解剖した個体の糞便検査は実施しなかった。
 対策として、PCV2ワクチンの母豚への一斉接種、分娩40日前の母豚に対して下痢発生時の分娩母豚とその子豚の糞の投与を行った結果、下痢は終息した。

【病理組織所見】
 壊死性小腸炎、表層性大腸炎と診断した。腸の免疫染色では、PCV2、ローソニア、サルモネラ、パルボウイルスはすべて(−)。特に粘膜先端部の変性、壊死、剥離が認められ、粘膜上皮細胞の変性や合胞体が見られた。



  上皮細胞の脱落や粘膜上皮の巨細胞はウイルス性の病変。免疫染色を実施してみるとよいとの意見が出た。
 また、産歴関係なく発症したのであれば、外から新しく侵入したのではないかという意見に対して、確かにこの農場では1年前から外部導入を開始しており、今回の下痢の出たタイミングは、外部導入の最初のロットが産み始めたタイミングと一致する、との回答があった。


5.小池 郁子 先生 : 一貫経営農場における浮腫病と連鎖球菌の発生

 神経症状・急死・衰弱豚が多発して事故率が上がった農場より、3検体についての報告。
 (1)神経症状を示した死亡豚:E.coli(VT産生)分離、病理では化膿性髄膜炎
 (2)神経症状を示した死亡豚:E.coli(VT産生)分離、病理では髄膜浮腫と非化膿性髄膜炎
 (3)45日齢:連鎖球菌分離、病理では全身の動脈周囲炎(脳の採材は無し)

【まとめ】
 微生物検査にて死亡時に有意に体内で動いていた病原体を確認することができ、病理組織検査でその他の病原因子の存在も推察され、死亡に至るまでの経過を検討することができた。特に敗血症時、両検査を組み合わせることで、より確実な診断ができると考えられた。免疫染色の結果とPCR検査結果の違い((1)、(2)はPCRではPCV2陽性だったのに、組織免疫染色ではPCV2は陰性だった)については検討が必要。

【病理組織所見】
 (組織写真なし)(3)は全身性の動脈周囲炎の症例だった。
 動脈周囲炎は豚に多いとのコメントがあった。また、神経症状の豚の場合には脳の採材も必要という指摘があった。


6.古市 朋大 先生 : 肥育豚におけるローソニアの症例

 90日齢で子豚舎移動2週間後に飼料摂取量が低下し削痩、発咳、水溶性下痢を呈した症例。

【病原検索】
肺 : APPU分離(1+)
腸管リンパ節・腸内容 : 病原性大腸菌分離(VT、LT、ST)
腸内容 : ローソニアPCR(−)

【病理診断】
肺 : うっ血性肺水腫
腸 : 潰瘍を伴うカタール性腸炎
    ローソニア免疫染色結果 腸(+)
    (ただし腸粘膜上皮(−)、粘膜下織のマクロファージ(+))
 検査個体ではローソニアのPCRは陰性だったが、免疫染色で陽性だったので、豚房の下痢便のPCR検査を追加して行った。その結果、50〜60日齢豚の下痢便でローソニアPCR陽性となったので、ローソニア対策を実施した。

【病理組織所見】
 ローソニア免疫染色で陽性となった。

  また、フロアからは、ローソニアは採材部位が大事。過形成した粘膜上皮細胞に菌がいるのでそこを取るとよい。病変が進行して菌を含んだ上皮が脱落し、糞便中に出てくると糞便のPCR検査で陽性になる。Nested-PCRを行うと感度が上がる。とのアドバイスがあった。


7.志賀 明 先生 :
  (1)劣悪な飼育環境下で発生したオガコ豚舎での肉豚死亡例
  (2)先天性と思われた線維乳頭腫の一例について


(1)劣悪な飼育環境下で発生したオガコ豚舎での肉豚死亡例
 バークシャー種の肥育豚400頭を飼育するオガコ利用の肥育専門農場。
 オガコ豚舎(床の深さ=30〜40cm)にて、10頭/房=1.1m2/頭の密度で飼育。
 2009年4月から死亡が16頭に急増(今まで1カ月1〜6頭)する。(16頭中11頭が出荷前の肉豚)死亡原因を確認するために病性鑑定を実施。オガコの状況が悪く、水分が過多で、豚が半分埋まっている状況。出荷前の豚が1豚房10頭中5頭立て続けに死亡した豚房からの採材。
 病理診断の結果は、軽度心筋炎とうっ血性肺水腫。代田先生のコメントでは原因不明とのことだったが、劣悪な飼養環境によるものと判断した。

【病理組織所見】
 心不全(循環障害)は好ましくない飼育環境下で、心臓の負担が大きかったためと考えられる。炎症は無く、感染の気配はない。
 オガコ豚舎なのであれば鞭虫も疑い、大腸も採材するべき、とのアドバイスがあった。

(2)先天性と思われた線維乳頭腫の一例について

  
哺乳期から発症(左)しており、4カ月齢で鑑定殺(右) (両写真:志賀明先生)

【病理組織所見】
 パピローマウイルスの免疫染色およびPCRは陰性であり、先天性が疑われる。


8.大井 宗孝 先生 : 哺乳豚の封入体鼻炎(サイトメガロウイルス)

 離乳豚群の2〜4%に鼻出血が見られた。体重6kgおよび4.5kgの子豚、2頭を検査した。
 2頭の鼻腔内スワブからはパスツレラと連鎖球菌が分離された。また、4.5kgの子豚の腸内容物からは クロストリジウムと溶血性を示す大腸菌が分離された。
 病理検査では鼻甲介に封入体鼻炎がみとめられ、サイトメガロウイルス感染症と診断された。

【問題提起】
 l98l年に45都道府県の肥育豚441頭の血清のエライザによる抗体調査では、434頭(98.4%)がサイトメガロウイルス抗体陽性(Tajimaら,1993)と報告している。
PMWSも当初は、PCV2の全国抗体検査報告では既に陽性率が高かったためPMWS問題の主因ではないとされた。重要疾病はPRRSであるとされ、PCV2に対する問題意識は当初はかなり低かった。
はたしてPCMVはどうか?
 豚病学より「PCMVはほかのヘルペスウイルスと同様に,潜伏感染をおこす。潜伏感染は生涯持続し、ウイルスはさまざまなストレスによって再活性化され,体外に排出される。ウイルスの再活性化はステロイド剤の投与によっても誘発される。ウイルスは上皮系細胞のほか肺胞マクロファージや細網内皮(RES)系細胞でも増殖することから,感染豚の免疫能を低 下させる可能性がある。したがって,飼育環境の悪化などのストレスによってPCMVが再活性化され,さらにほかの疾病を増悪させることが懸念される。」とある。また、ヒトでは「ヒトサイトメガロウイルス(以下CMV)感染症は、CMVの初感染、再感染あるいは再活性化によって起こる病態で、感染と感染症は異なることを明確にする必要がある。通常、幼小児期に不顕性感染の形で感染し、生涯その宿主に潜伏感染し、免疫抑制状態下で再活性化し、種々の病態を引き起こす。」という記述があるが、豚でもウイルスの再活性化は起こっているのか?

【病理組織所見】
 サイトメガロウイルスに特徴的な封入体鼻炎が観察された。

 老齢の豚のサイトメガロウイルス感染(再活性化)はあまり例がないというコメントがあった。


9.西山 祥子 さん(麻布大学 病理学教室 学生)
  :
PCV2関連疾患における消化器病変の病理学的検索

【研究報告】
 PCV2と診断された72頭の豚検体の胃と腸(主に回腸)について病理組織学的、免疫組織化学的検索を行った。また、抗cleaved caspase3を用いてアポトーシスの有無を調べた。
 胃線の峡頚部や腸陰窩上皮細胞核内にPCV2抗原が存在し、同部位に単核細胞壊死や変性が一致して見られたことから、PCV2の標的が胃腸において分裂活性を有する未分化上皮細胞であることが示唆された。 PCV2は十二指腸腺に親和性が高い傾向があるようだとのコメントがあった。

 
   
     
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